主訴(出っ歯、上顎前突)の改善のためには、次の2種類の治療法が考えられます。
(1) 上顎(うわあご)の4番目の歯(第一小臼歯)を2本便宜抜歯する。
(2) 一番奥のスペースを利用して全体的に後方に歯を移動させる。
(1)の治療法は、出っ歯な状態を改善するために、前歯を後ろに下げるために途中の歯を抜いてそのスペースを利用し改善を図る計画です。
(2)はインプラント矯正にて、12歳臼歯の後方のスペースを利用して上の歯全てを後方に移動させる計画となります。
どちらの治療方法でも、前歯の治療ゴールは同じで、次のような(側方)予測図が考えられます。
つまり、前方に傾斜した下の前歯を少し立たせさらに圧下させ、上の前歯を下の前歯の位置まで後方に下げるゴール設定です。
図1がこの患者さんの治療ゴール(治療設計図)となります。黒い線が治療前の状態で、赤い線が治療後の歯の位置を示します。前歯の突出感の改善とともに口元の改善も見込まれます。この設計図をもとに治療を進めていきます。
この治療ゴールは、当然のことですが、患者さんごとに設計していきます。
さらに、詳細な歯の移動を確認するためには、セットアップモデルおよびオクルゾグラムを作製します(図2)。
このオクルゾグラムを作製すると、歯一本一本の詳細な動きが分かり、この例のように奥歯の移動量が明確となるため、
治療達成可能かどうかの判断がしやすくなります。
※セットアップモデルおよびオクルゾグラムの作製は、オプションとなっております。
①案と②案を患者さんに診断時にご提案しましたが、なるべく大人の歯(永久歯)を抜きたくないことから、②のインプラント矯正治療で治療を進めることになりました。
主訴である「前歯の突出」も改善され、前歯によって押し出されていた上唇の突出感も無くなり、
唇を閉じやすくなったと患者さんにとても喜んでいただきました。
設計された予知的な矯正治療は、患者さんに安心して矯正治療を受けていただける最適な方法です。
当院では、最適な矯正治療が複数考えられた場合、治療ゴール、治療方針等を詳細に患者さんにご説明させていただき、
インフォームド・チョイスできるようにしています。